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JX日鉱日石金属
松崎幸範

 既にLC分析士は四段があるのに二段の私がコラムを書くのは気が引けるところですが、60歳の定年を期に液クロ(HPLC)の思い出話をしたいと思います。

 液クロは、丁度娘が生まれた頃に使い始めたので35年になります。35年前、会社の実験室に真新しい分析装置が置いてありました。その頃、新しい装置の購入など稀で新しもの好きの私は、上司にその装置のことを尋ねると反対に「HPLC使ってみるか?」と聞かれ、その名前の意味も解らず、装置が何であるか何ができるかも知らずに即答、それが液クロとの出会いでした。しかし、弊社は金属系の会社でHPLCユーザーは居らず社内の液クロ情報は皆無でした。データ本や液クロ本など読んでも、自身が直面している問題を解決できることは少なく、図々しくメーカーのラボに通い、液体クロマトグラフィー研究懇談会(液クロ懇)も通い、分離が上手くいかないときはどうすれば良いか、移動相の作り方、検出方法、カラムの選び方など学んだことは数えきれません。

 液クロを使い始めた頃は、HPLCから単離され出てくるピークを見るたび実験が面白くて、ついつい実験に没頭 “家庭より液クロ優先”の生活が続きました。連日家に帰る時間が遅くなり、まだ幼かった子供達は中々懐かず、そこで風呂を泡だらけにして一緒に遊んだら、これが好評で毎日のイベントになりました。あれから多彩なサンプルと分離モードに出会いながら、気が付いたら液クロと長い付き合いになりました。学会の情報交換会でベテランクロマトグラファーが、液クロの魅力について「触るところ、条件を変えるところが多いのが魅力」と言われていましたが、確かにHPLCから出てくるピークには手作り感があります。

 ところで、山の頂上も“ピーク”と言いますが私は山のピークも好きです。北アルプス穂高岳に広がる涸沢カールの朝、朝日が昇り始めモルゲンロードに染まる穂高の山並みを見たとき山に魅了されました。日本は山と海に囲まれ自然豊かな国です。そして山あるところに水の源、源流があります。5年前、黒部川の源流(北アルプス水晶岳~岩苔乗越付近)を見たいと思い、源流求め山を歩いてやっと辿り着いたら、その日は大雨。源流と思われる周辺は源流どころか川状態でした。数年後にリベンジ、今度は快晴で岩の間から落ちる源流の“滴“を見つけ自然の奥深さを感じました。

 話は液クロに戻りますが、これまでめっき液、金属表面処理剤、石油関連サンプルのHPLCによるアプリケーションの開発をおこなってきましたが、数年前から金属分析に液クロを活用しようと考えています。例えば金属の形態分析(価数分析)は操作が複雑で、溶液中の金属形態は常に変化するため分析精度は良くありません。金の分析は乾式試金法でおこなっていますが、方法は複雑で高い技術と特殊な設備が必要です。これらの分析にLCの特徴を活かした、シンプルで効率の良い分析法を開発したいと考えています。

 弊社の分析はメインが無機分析であるため、HPLCのオペレーターは多くの場合、液クロの知識、経験が無いままHPLCの操作を始めます。最近、オペレーターの若手数人と“LCランチ”と称しサラメシ食べながら「液クロ虎の巻」を教材に輪読をおこなっています。液クロの知識を通して化学分析、化学の知識を育てようと考えています。企業では、つい装置の操作など日常業務の表面的なところに目を向けがちですが、そこにある分析の基礎はもっと重要です。分析士の受験は、これらの基礎と化学に目を向け学習する良い機会になったと思います。最後になりましたが、これまで私を支えてくれた液クロとそのヒューマンネットワークの皆様に感謝いたします。

(2013年6月27日記)

プロフィール
松崎幸範 Yukinori Matsuzaki  LC分析士二段
略歴 1971年4月日本鉱業日立精錬所分析課に入社、1974年同社本社、1976年同社中央研究所(埼玉県戸田)、2010年7月新日石と統合によりJX日鉱日石エネルギーに社名変更、2011年4月JX日鉱日石金属技術開発センター(茨城県日立)へ転籍、2013年2月定年により解職、同年3月から契約社員として同所勤務、現在に至る。現在のテーマは、金属分析におけるLCの活用
趣味 登山、スキー、蕎麦打ち

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悪沢岳(南アルプス)3,141m